うわさ
(うわさ)
【漢】噂
うわさも流言も英語ではrumorであり、デマという場合もある。このように、うわさ、流言、デマは、相互に入り組んだコミュニケーション現象であって、明確な概念的区別は甚だ困難であり、とりわけ、うわさと流言との境界はまことに微妙といわざるをえない。したがって、次に述べるうわさの説明も、かならずしもうわさのみに固有な特質や条件ではなく、それらの特質や条件を総体的にとらえるときに、うわさの概念像がおのずと浮き上がってくるというべきであろう。
(1)うわさは人から人へと「口コミ」によって広がっていく。(2)人々の間に広がるためには、うわさの内容が人々にとって共通の関心事でなければならない。(3)口コミによる伝達過程において、うわさはしばしば変形されたり、ゆがめられたりする。(4)人々はうわさの真偽を確かめられぬまま、一面ではなにかしらうさん臭さを感じながらも、他面ではある種の感情的親和性に支えられて、伝達行動に走ると思われる。(5)うわさはしばしば自己増殖し、主題に付随するさまざまの小うわさを発生させるとともに、そのうわさを否定したり抑制する「対抗うわさ」を自生的に誘発し、両者の競合、葛藤{かつとう}の動態的過程を経由しながら、その周期を全うする。しかし、うわさの周期的一巡といっても、フランスの社会学者E・モランが述べているように、「地底の無意識の深部から浮かび上がってきて、うわさはふたたび地底へと戻っていった」にすぎず、人々の集合的無意識はうわさの発酵素として生き続け、孵化{ふか}条件が整えば、いつでも噴き出す場合が少なくない。(6)昔から「人のうわさも75日」といわれるように、うわさの周期は比較的短い。デマ 流言 <岡田直之>
【本】E・モラン著、杉山光信訳『オルレアンのうわさ』増補版(1980・みすず書房) ▽R・L・ロスノウ、G・A・ファイン著、南博訳『うわさの心理学――流言からゴシップまで』(1982・岩波書店)
