似絵
(にせえ)
大和{やまと}絵様式による肖像画。鎌倉初期ごろから盛んとなり、写実的・記録的傾向が強い。架空の人物図や、尊崇・礼拝の対象に描かれた画像は似絵とはいわない。とくに公家{くげ}、武家の世界で用いられ、単独像はもとより、群像として描かれたものもあり、いずれも面貌{めんぼう}の個性的表現に重点が置かれている。用語としては13世紀中ごろより文献に現れ、15世紀中ごろまで使われている。また人物ばかりでなく、牛馬や具足などの図に用いられた例もみられる。この種の新しい形式の肖像画は、平安末から鎌倉初期の藤原隆信{たかのぶ}に始まり、子の信実{のぶざね}によって発展を遂げた。『後鳥羽{ごとば}上皇像』(大阪・水無瀬{みなせ}神宮)、『随身庭騎{ずいしんていき}絵巻』(東京・大倉集古館)などが信実の作と伝称され、模本として残る『中殿御会図巻{ちゆうでんぎよかいずかん}』の原本を描いたことでも知られる。信実の家系は似絵の画系として受け継がれ、『花園{はなぞの}天皇像』(1338、京都・長福寺)を描いた鎌倉末期の豪信{ごうしん}に至る。なお牛馬の絵では『駿牛{すんぎゆう}図巻』『馬医{ばい}草紙』などが有名である。 <村重 寧>
