鉱物

(こうぶつ)
mineral
天然に産する、ほぼ一定の化学組成と、ほぼ一定の原子配列をもつ物質であって現在生命力をもたないもので、少数の例外(水銀、水)を除いて常温で固体である。

【種類の数】
1984年(昭和59)6月末日現在、世界全体で約3400種、日本で約850種が知られており、年平均60ないし80種増加している。

【分類法】
類別した各類に重複した配置を許す非系統分類と、重複しない系統分類とが可能である。前者には、たとえば成因的分類、応用的分類などがあり、後者には、結晶学的分類、化学的分類などがある。

【現行の分類】
現在用いられている分類は、化学的分類に結晶学的性質を考慮したもので、定義において、化学組成と原子配列が重視されていることと対応している。最初の提唱者はスウェーデンのベルツェリウスJ. J. Berzelius(1779―1848)で、その後幾多の改良を経て、いまではドイツのシュトルンツH. Strunz(1910― )によるものが世界的にもっとも広く用いられている。ここではこれをさらに改良した筆者の分類を紹介する。
まず鉱物全体を次の四つの類に大別する。
(1)基本的に単一種の元素からなる鉱物。
(2)基本的に2種の、性質の異なる元素からなる化合物の鉱物(有機鉱物は除く)。
(3)基本的に3種の元素からなり、その1種は酸素であるような化合物の鉱物。
(4)有機鉱物の有機的な作用の産物であるが、現在生命力を有しないもの。
これらの類を構成するものは次のとおりである。
(1)元素鉱物。
(2)硫化鉱物、炭・窒・リン化鉱物、酸化鉱物、ハロゲン化鉱物。
(3)炭酸塩鉱物、硼{ほう}酸塩鉱物、亜セレン酸・亜テルル酸塩鉱物、亜砒{あひ}酸塩鉱物、沃{よう}素酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、タングステン酸・モリブデン酸・クロム酸塩鉱物、燐{りん}酸・砒酸・バナジン酸塩鉱物、珪{けい}酸塩鉱物。
(4)有機酸塩鉱物、炭化水素鉱物、炭水化物鉱物など。
これらのうち硼酸塩鉱物と珪酸塩鉱物とは、原子配列に重点を置いた細分が可能である。

【鉱物の物理的性質】

(1)色 鉱物の色は、光に対して透明なものは透過光の吸収された余色、不透明なものは反射光の色である。透明なものでも、多結晶の集合体となれば白色みを帯びた色になるため、鉱物自身の状態によって多少変化する。着色したイオンをつくる重金属を含む鉱物では、その色が鉱物自身の色に反映されることも多い。
(2)光沢 無光沢(土状光沢とほぼ対応する)、ガラス光沢、真珠光沢、絹糸光沢、樹脂光沢、脂肪光沢、亜金剛光沢、金剛光沢、亜金属光沢、金属光沢などのような用語によって記載される。
(3)条痕{じょうこん}色 鉱物の細粉の色である。普通、条痕板上にこすりつけた色で観察する。
(4)硬度 鉱物の硬度の測定に際しては、鉱物相互間の相対的な擦過{さつか}硬度を、指準鉱物を用いて決定するモース硬度と、重量をかけたダイヤモンド針を、平らに磨いた鉱物の表面に押し込んだあとの大きさを測定して得られる嵌入{かんにゆう}硬度の一つであるビッカース硬度の二つがよく用いられ、両者の間には一定の関数関係がある。硬度計
(5)劈開{へきかい} 鉱物の結晶に機械的な力が加わったとき、一つあるいはそれ以上の平らな面に沿って割れる性質をいい、その面を劈開面という。劈開の程度は、完全、明瞭{めいりょう}、良好、不完全、不明瞭の五段階に従って記述され、その方向は結晶面と同様の方法で決定される。劈開はその鉱物の原子配列と密接な関係があり、同一種の鉱物では原則として同一程度、同一方向の劈開が存在する。
(6)裂開 普通、劈開の発達しない鉱物、あるいは劈開のある鉱物でも劈開の発達していない方向に、産地あるいは産状によって、一見劈開様の面の発達することがある。これを裂開といい、劈開と同様の方法で記載される。
(7)断口 劈開のない鉱物あるいは劈開以外の方向の鉱物の割れ口を断口という。これを記載するには、平滑、不平滑に大別し、不平滑の場合を、貝殻状、鋸歯{きょし}状などの用語で表現する。
(8)比重 比重とは鉱物の重量と、それに同体積の3.975度Cの水の重量との比で示される。密度も比重同様に用いられるが単位をつける必要があり、多くはグラム/立方センチメートルで与えられる。
(9)その他 いままで述べたものは、多くの鉱物の記載の際、その鉱物を特徴づける属性として、かならず観察の対象となるものであるが、これ以外にも、場合に応じて重要となるものがあるので、これらを一括して記述する。すなわち、熱的性質(生成熱、熱伝導度、熱膨張係数、比熱、溶解熱、加熱減量曲線、示差熱分析曲線など)、電気的性質(電気伝導度、熱電気、焦電気、圧電気など)、磁気的性質、粘靱{ねんじん}性(脆{ぜい}性、柔性、展性、延性、靱性、撓{とう}性など)がある。またこれらに属さないもので、触感、臭気(打撃、加熱などによる)、味なども物理的性質に含められることがある。

【光学的性質】
可視光線に対して鉱物が与える諸性質で、透明鉱物に対しては、屈折率、複屈折、軸色など、不透明鉱物に対しては、反射能、反射色などがあり、とくに定量的に示されるものは同定上重要である。

【化学的性質】
鉱物は化学物質であると同時に、その定義には化学組成が関与しているため、化学的性質のうち、実験式、理想化学組成式などは、記載上必須{ひつす}の性質である。
(1)実験式 鉱物を完全化学分析によって各成分とその含量を求め、これから各成分の原子比を計算する。成分が複雑な場合には、類似の性質をもったものごとに一括して集団をつくり、それらの間に整数比をみいだすことによって実験式を決定する。
(2)理想化学組成式 実験式中、少量成分を除外し、主成分と判断されるもののみによってつくった式である。これが実際上通用するか否かは、結晶構造の決定によらなければならないが、決定作業前でも、作業仮説的な利用価値を有する。理想化学組成式には、原子団の概念を導入して、酸基の形を明示したものと、酸化物あるいは硫化物を並列した形で示したものとがある。
(3)構造式 結晶構造の決定により、理想化学組成式から導かれるもので、結晶学的な分類の際の基礎となるものである。
(4)試薬に対する性質 試薬となるものは、塩酸、硫酸、硝酸などの酸、アルカリ、水などを用いて鉱物との反応をみる場合が多い。たとえば、炭酸塩鉱物の多くは酸で分解され、二酸化炭素を放出し、いくつかの硫化物は酸と反応して硫化水素の悪臭を発する。

【結晶学的性質】
鉱物の結晶構造上の性質として次の三つがあげられる。
(1)形態 鉱物の外側は、結晶系によって支配されたある法則によって与えられる平面によって囲まれることがある。この面を結晶面といい、その集まりを結晶形という。結晶面は、その内部の規則正しい原子配列の反映である。鉱物の形態は、原則的には結晶面の発達の仕方によって支配され、これを記載するのに、毛状、針状、柱状、板状、錐{すい}状、葉片状、粒状などの用語が用いられる。また複数個の結晶の集合する場合は、規則性を示すもの、たとえば平行連晶、双晶などと、規則性を示さないもの、たとえば放射状、球果状、ぶどう状、皮膜状、樹枝状、繊維状などの用語で記載される。
(2)原子配列 結晶質物質の原子配列は結晶構造とよばれ、鉱物の原子配列の多くはこれに相当する。原子は単一原子として取り扱いうる場合と、一つの原子を中心とした原子団として取り扱いうる場合とがあり、この原子団を一つの多面体とみなすと、その形は対称の要素に支配されるため、中心原子は、対称の要素(対称心、対称面、対称軸など)の上に存在することが多い。
(3)結晶化学 原子どうしの結合には、イオン結合、共有結合、金属結合、ファン・デル・ワールス結合の四つの型があり、原子を球とみなした場合、ある結合半径をもっているとして取り扱いうる。結合半径の近似した、化学的性質の類似した原子は、鉱物全体の原子配列を保ったまま置換しあうことがあり、同形置換とよばれる。鉱物の化学組成の複雑化の原因の一つである。一方、構成する元素の種類や相互の量比が同じでも、異なった原子配列をとる鉱物もあり、これは同質異像関係とよばれる。この関係にある複数鉱物種(たとえば石墨とダイヤモンド)は、それぞれが異なった生成条件を示すことが多い。

【成因】
鉱物には、海水を構成する水分や、隕石{いんせき}の成分鉱物などのように成因不明のものもあるが、その成因としては、〔1〕気体、液体、溶融体など流体から生成される場合、〔2〕既存の鉱物あるいは固体物質とこれら流体との反応によって生成される場合、〔3〕既存の鉱物あるいは固体物質どうしの反応、転移あるいは結晶化によって生成される場合、の三つが考えられる。具体的には、火山ガスからの昇華、熱水溶液からの沈殿、溶岩の固化などが〔1〕の場合に属し、熱水変質作用やスカルンの生成、地表での鉱物風化などが〔2〕の例、〔3〕の場合には、変成作用による変成鉱物の生成などが含まれる。

【産状】
産状とは、産出状態の短縮語とみなすことができる。鉱物は地殻を構成する最小単位であるから、その集合がすなわち産状である。したがって、その集合の性格にのっとってなされた分類が、もっとも有意義な産状の分類である。たとえば、造岩鉱物、造鉱床鉱物というように地質単位に重点を置く方法、初生鉱物、二次鉱物というように生成過程を配慮する方法などがあり、これらを組み合わせたり細分したりする方法を取り入れれば、いっそう具体的になる。すなわち、造岩鉱物を、火成鉱物、後火成鉱物、堆積{たいせき}鉱物、変成鉱物、交代生成鉱物などというように細分し、地質現象の産物としての集合体の構成物という性格をより鮮明にすることができる。現在、鉱物の産状の記述に関しては、一貫した統一表現方式は存在していない。逆にいえば、かなり自由に、問題とする鉱物の存在意義がもっとも強調される方向に行われているのが現状である。

【利用】
鉱物資源としては、われわれの日常生活に欠くことのできない有用金属元素の鉱物のほか、化学工業用、窯業原料用、エネルギー源用など、鉱物のもつ物理的・化学的特性を応用して利用されているものが数多く存在し、その利用の範囲は多岐にわたっている。鉱物資源の利用については古代より研究、開発されてきたが、世界的な人口増加がみられる昨今では、それら資源の有効な利用が望まれることはもちろん、未利用の鉱物資源の開発や新しい利用法の開拓も今後に残された重要な課題といえよう。鉱物資源

【採集】
鉱物の採集は、鉱物を対象とする活動のうち、もっとも基本的なもので、それに引き続く作業の土台ともなるものである。もちろん、一つの科学的な研究として行う場合と、趣味的な活動として行う場合とでは、その重点の置き方が違うので、当然準備の仕方も異なってくるが、ここでは主として後者の場合について述べる。
まず目的地の選定であるが、とくに目的地を設定せず、文献や地質図などで見当をつけていく方法と、産地に関する情報によって目的地を絞る方法とがある。後者についてはとくに説明を要しないと思われるので、前者について説明する。この方法でも、最低限、地質の概略に関する知識は必要である。対象として考慮に値する地質単位ならびにその組合せとしては、花崗{かこう}岩ペグマタイト(ペグマタイト鉱物、造岩鉱物)、花崗岩接触帯とくに石灰岩、苦灰岩などとの接触部(接触変成鉱物、スカルン鉱物、金属鉱物)、超塩基性岩(蛇紋石鉱物、脈鉱物)、比較的変成度の高い結晶片岩(広域変成鉱物、脈鉱物)、新第三紀以後の火砕岩、火山岩(沸石類)などがある。
次に採集用具である。まず採集のため直接必要なものは岩石ハンマーで、大小両方あれば便利であるが、最初は小(1.5ポンドか2ポンド)から慣れていくのがよい。ハンマーはもちろん打撃で岩石を壊す道具で、正方形の断面の上側の稜{りょう}で打ち、なるべく狭い面積で接するように振る。振り方は、振り上げてから途中までは腕全体で、その先は手首を使い、当たる瞬間握りを緩めるとうまくいく。次に必要なものはたがねで、丸たがねと平たがねとがある。前者は方向性の乏しい岩石に、後者は方向性のある、あまり堅くない岩石に対して有効である。なお、ハンマーやたがねを扱うときには軍手をつけていたほうが、けがが少ない。採集したものをよりよく観察するには、ルーペ(拡大鏡)が必要である。これは天眼鏡式のものより、2枚のレンズが短い筒の両端についたもののほうがよい。観察したものの記録には、筆記用具、野帳{やちよう}を用意する。写真機、録音機などが有効なこともある。この種の作業にあたって、採集地の確認のため、地形図、方向磁石、ときに高度計などが必要で、これらによって産地の確実な位置の再現が可能になる。
標本について、多数採集した際の識別のため、番号、記号を記入する。これにはフェルトペンを用いるが、火山岩や超塩基性岩など、のちにガス分析などに使用される可能性のある標本の場合には、フェルトペンや古新聞を用いると汚染の原因となるので、ポリエチレンの袋に入れて密封し、その表面に番号を書く。普通の採集品の場合には、古新聞、木綿袋、ポリエチレン袋などを用い、他の標本と接して破損のおそれのないものは、なるべくひとまとめにしておく。破損しやすいものは、ちり紙、脱脂綿などで包装し、最後にセロファンテープなどで固定し、これに番号を入れる。以上は普通の場合であるが、椀{わん}または盆のような容器を用いて流水中で川砂をより分け、比重の大きい鉱物を採取するパンニング(椀掛け)とよばれる作業で得たものについては、これを入れるポリエチレン袋、選別用マグネット、ピンセット、小箱などが有効である。

【標本の保存と整理】
採集した標本は全部保存するより、十分観察し、必要なものを保存するようにすべきであろう。選別の基準は、普通は粒度の大きいもの、新鮮なもの、外形のよく発達したものなど、目的とする鉱物自身に重点を置く場合と、産状のよくわかるもの、共生関係が明らかなものなど、それ以外の要素を考慮する場合とがあり、これ以外にも珍しい鉱物、未決定の鉱物などを対象とする場合もある。いずれの場合も、保存する主旨ははっきりしていなければならない。
標本の保存のためには、整理しやすい形、すなわち整形を施されて不必要な部分を落とした形とし、清洗して汚れがないようにしたものを、適当な小箱や容器に収納したものを整理たんすなどに保全する。この際ラベルをつける。ラベルには、鉱物名、産地の必要最低情報を記入する。また必要に応じて、標本とラベルに共通の番号をつけて台帳をつくって整理することもある。
整理方法として、産地別、分類別、元素別、産状別など多くの方法があり、それぞれ一長一短がある。いずれの方法をとるにしても、標本として利用する際もっとも使いやすい方法で統一するのがよい。また、まったく分類せず、カード、コンピュータなどに必要事項を入れ、これらを用いて分類するという方法もある。

【標本の観察】
自分が実際に観察した現場での採集品をさらに詳しく観察する場合であれば、特別な場合(たとえば砂鉱中の鉱物など)を除き、問題とする鉱物種を含む標本の地質学的な意義はある程度与えることが可能である。一つの標本が単一鉱物からなる場合においては、その鉱物自身の諸属性の確認のほか、その鉱物がその採集地に産したという情報を提供することになる。もし複数種からなる場合には、生成条件の推定をはじめ、それらの間の生成の前後関係、類似の鉱物集合との比較による相対的な生成環境の差異に関する議論などが可能になり、またそれを構成する元素が、地殻中の濃度の低い場合には、濃集機構に関する追究などができる場合もある。いずれにしても、単鉱物と複数鉱物とからなる標本、参考標本の有無、参考文献の有無などによって、そこから引き出しうる情報の量や質には大きな幅がある。 <加藤 昭>

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