地域紛争
(ちいきふんそう)
regional conflict
地理的に限定された範囲で発生する紛争をいう。一般的には戦争warを国家間の軍事的手段による闘争と定義し、紛争はそれ以下の対立、抗争とすることが多い。しかし国際連合憲章が戦争を禁止し、自衛権の行使と国連による制裁だけを認めていることから、国家間の武力闘争を含めてconflictとよぶ場合も増えている。
アメリカは冷戦終結後の1990年8月、国防戦略の焦点を旧ソ連のグローバル(世界的規模)な脅威から地域紛争に移すことを明らかにした。湾岸戦争後の93年9月、クリントン政権の下で発表された戦略は「ほぼ同時に生起する二つの大規模地域紛争(major regional conflicts=MRC)を戦い、勝利する」ことを目標として設定した。このMRCは、湾岸戦争規模の武力紛争をさしている。
「リージョナル」は「ローカル」(局地)より広い地理的範囲をいう。その後アメリカ国防総省は「MTW(major theater war=大規模戦域戦争)を戦い勝利する」とも述べている(例:国防報告98年2月)。この「シアター」とは太平洋、ヨーロッパなどアメリカ統合軍司令官が責任を負う戦域をさす。したがってグローバル紛争以外はすべて地域紛争に含まれるといえよう。
紛争の激烈度の点からみると、アメリカでは地域紛争は戦略核戦争および地球規模通常戦争を除くだけで、湾岸戦争以上のMRCないしMTWまでが想定されている。限定的な核使用もありうる。その上限には「新太平洋戦争」が入っているかもしれない。
歴史的経過からすると、地域紛争が重大な国際問題となったのは冷戦終結とソ連崩壊以後のことである。ソ連の支配力低下でソ連、東欧、第三世界の諸地域で紛争が多発し、加えて第二次世界大戦後の植民地解放に伴う国境紛争や民族対立、地域の覇権を求める独裁国家の台頭、1970年代以後の宗教紛争などが複雑に絡み合って武力紛争に発展してきた。とくにテロや暴動、ゲリラなど短期的武力行使が増加したのが最近の特徴である。
アメリカがテロや内乱、ゲリラ戦への対処を重視することになったのは、東西対立が緩和し始めた1980年代後半からである。その対象はLIC(low-intensity conflict=低強度紛争)とよばれた。83年10月のベイルート駐留アメリカ海兵隊司令部爆破事件では局地通常戦争に匹敵する犠牲者を出すなどテロの危険性が増し、対テロ作戦が重要な課題になってきたのである。このLICが、紛争の激烈度の面では地域紛争のスペクトラム想定範囲のなかで下方に位置している。
地域紛争の解決には、国連憲章が定める紛争(dispute)の平和解決、平和の維持、回復のための措置、地域的行動が有効である。武力紛争の手段となる兵器の輸出、開発、生産の規制、化学兵器など非人道的兵器の禁止も重要な意味をもつ。また国連平和維持活動などの対症療法も活用されている。同時に紛争の根本要因といえる第三世界の貧困と南北格差の解決、人権と民主主義の確立がいっそう重視されるべきであろう。 <藤井治夫>
