たばこ入れ

(たばこいれ)
刻みたばこを入れるための袋物。江戸時代初期のころは、刻んだたばこは白い奉書の紙に包むのが上品とされたが、屋外で働く人は手製の巾着{きんちやく}に入れてきせるに結び、腰に提げた。また鉄砲の弾丸を入れた胴乱{どうらん}を改造して用いる人もあり、しだいに庶民の間に広がって上流階級にも及んだが、武士は印籠{いんろう}を提げるため懐中用を使っていた。たばこ入れの形には、(1)一つ提げ 巾着または胴乱を根付{ねつけ}で提げるもの、(2)腰差 巾着または胴乱にきせる筒をつけ、きせる筒で腰に差すもの、(3)提げ 胴乱にきせる筒もあるが根付で別に提げるもの、(4)懐中用 革製もあるが、おもに布製の二つ折りで、共裂{ともぎれ}のきせるを入れる袋がつき、婦人用が多い、(5)とんこつ 雨にぬれても中身のたばこが湿らないように木製と金属製があり、一つ提げと腰差形がある、(6)袂落{たもとおと}し 布または竹、籐{とう}で編んだ小さな袋2個を、鎖または紐{ひも}でつないで両方の袂へ肩から提げるが、一方の袋には懐中用の小形たばこ入れを、もう一方の袋には手拭{てぬぐい}などを入れる。たばこ入れはとかく置き忘れることが多いので、このようにさまざまな形があった。
胴乱には金唐革{きんからかわ}、印伝革{いんでんがわ}が使われたが、これらは当時輸入品で高価なため、裕福な人たちのたばこ入れになった。庶民の多くは、一見革製にみえるが和紙に桐油{とうゆ}を塗ったり、渋{しぶ}を拭{ふ}いて柿{かき}色に染め、革まがいにしわをつけたものを使っていた。江戸時代後期になると、国産の革製もできて、たばこ入れは身につける唯一のアクセサリーとなり、胴乱の蓋{ふた}に著名な彫金師のつくった留め金具を用いたり、きせる筒の材質にも凝るようになった。明治時代には胴乱、金具、緒締{おじめ}、筒の組合せに粋を凝らした工芸品もつくられたが、いまでは好事家{こうずか}の収集品になっているにすぎない。両切りたばこの出現とともに、金属製のシガレット・ケースにとってかわられている。 <田中冨吉>

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